ある冬のお昼過ぎ、かなは近くの山へ出掛けていきました。
かなは、今年で六年生です。
かなの住んでいる町にある動物山には、おかしな噂がありました。
その噂とは、山の中で迷ってしまったら、動物になってしまうという噂でした。
でも、かなはそんな噂を信じていません。
かなの友達はみんな、噂を信じています。
なので、遊びに誘っても来てくれません。
動物山には、ソリで滑るのにとても適している所があるのを、かなは知っていました。
なので今日も山に行くことにしました。
「こんなに面白い所があるのに、なんでみんな来ないんだろう。噂なんて、嘘に決まっているのに!」
そんな事を言っているうちに、かなは、山に着きました。
「今日も誰もいない!思いっきり滑るぞー!」
と、かなが、一回目を滑り始めました。
すると、ちょっとした雪の山にぶつかって、下まで滑り落ちてしまいまいました。
かなは、怖くて暫くの間、目をつぶっていましたが、やがて目を開けました。
幸い怪我はなかったけれど、そこはかなの全く知らないところでした。
「え、、、。こんな所しらない!どうしよう!」
かなは、心配になってきて、ふと動物山の噂を思い出しました。
「うそ!?私、動物になっちゃうの!?」
かなは、とりあえず、高い所に登って、あたりを見回してみようと思いました。
かなが立つと、なんだか頭が重い気がします。
かなが自分の頭を触ってみると、、、、、なんと、かなの頭には、ウサギの耳が生えていたのです。
かなは泣きたくなりました。
でも、きっと山を抜け出す方法があるはず、とあたりを見回すと、何かの足跡がありました。
足跡は、どこまでも続いています。
かなは、その足跡を追ってみることにしました。
かながずっと足跡を追っていると、急に足跡がなくなってしまいました。
「何でだろう。」
と、かなは思いました。
すると、目の前に可愛らしいうさぎが一匹います。
「なんだ。うさぎの足跡だったのか。」
かなは言いました。
次の瞬間うさぎが、
「うん。そうだよ。」
と、言ってにっこり笑ったのです。
かなは、うさぎが喋るなんて聞いたことがありません。
自分がおかしくなったのかと思いました。
でも、うさぎはまた喋り始めました。
「僕は前、この山に迷ってしまって、ウサギになったんだ。他にも仲間がいるけど、もうみんな、山を抜け出す方法を考えるのを、諦めちゃった。」
とかなは、前は人だっと聞いて、少し安心できました。
「私も今、山に迷って、段々ウサギになってきたの。良かったら、一緒に山を抜け出す方法を考えない?」
ウサギは暫くの間考えていましたが、やがて、
「うん。いいよ。一緒に頑張ろう。」
と言ってくれました。
「私は佐々木かな。よろしく。」
かなは軽く自己紹介をしました。
するとウサギも自己紹介を始めました。
「僕は、多田健太。よろしく。」
一人と一匹は山を出る作戦を立てました。
早速実行します。
健太に仲間を呼んできてもらいました。
リスや、ウサギ、クマまでいます。
みんなで力を合わせて一気に山を登ります。
「いっせのーで!」
と、かなの合図で、みんなは一斉に山を登り始めました。
みんなで力を合わせてどんどん山を登っていきます。
かなが一番始めに登り終わりました。
リスが二番目、ウサギが三番目に着きました。
後はクマだけです。
子グマと入ってもかなり大きいのです。
かなは、クマだけ登れないんじゃないかと心配になりました。
みんなが大きな声で応援しています。
後少し、という所で、クマが足を滑らせてしまいました。
「あっ!!」
みんなが一斉に声を上げました。
その時です。
たまたま通りかかったシカが、クマを引っ張ってくれました。
「やったぁ!」
これでみんな登れ切れました。
ここはもう、かなの知っている所です。
でも、かな達はまだ動物のままだったのです。
「なんで!?」
かなはもう嫌になってしまいましたが、まだ山から出ていないことに気づきました。
みんなで山を出る道を歩いていきます。
やっと山を出ました。
すると目の前にあのシカが出てきました。
クマを助けてくれたシカです。
シカは、動物たちの前に立って、ふぅっと息を吐きました。
すると、みんながキラキラ光っています。
かなと動物たちは、みるみるうちに人に戻っていきました。
リスや、ウサギ、クマになってしまった子供達も、元通りです。
かなが空を見上げると、まだお昼すぎのようです。
「あれ?私が家を出たのは、お昼過ぎだったのに。」
と、かなは不思議に思いました。
すると、山を抜け出すために協力してくれた健太が言いました。
「動物山のもう一つの噂を知ってる?」
「え?知らない。」
かなは言いました。
「山から出る間に、シカに会った人は、時間が巻き戻されて元通りになるんだって。僕の場合、前に迷ったから、もちろんお母さんが心配してると思うよ。僕がいなかった間のことは、記憶が消されるから、全て元通りなんだ。」
かなは安心しました。
家を出てから、かなり時間が立っていたけど、元通りになるなら大丈夫だと思いました。
あの日から、かなは何度か動物山に行きました。
もう迷うことなんてありません。
しかも、あの事があったから、今まで以上に友だちも増えました。
今日もかなは、動物山に出掛けます。
あの日、一緒に山を抜けたみんなと一緒に。
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